2010年4月28日水曜日

【翻訳】量子重力理論の5つの問題

English version
量子重力理論の問題について、Stromingerさんの5つにまとめられた論文があります。(プレプリントarxiv:0906.1313 正式論文はNuclear Phsics B (2009) 119-125)

勝手に、各項目の先頭に四角で囲んだ要約をつけました。わかり易くしているつもりです。

量子重力理論の5つの問題

もとのarxivは、

Five Problems in Quantum Gravity

3次元重力の問題

3次元重力の問題

今年になってからある友人と、ブラックホールの話をしていて、Stromingerさんの「(量子重力理論の)5つの問題」と題するエッセイ(?)を見る機会がありました。この中に3次元重力について書かれている部分があり、これを引き金にして、

1、 Chern-Simons理論と重力理論の関係はどうなっているのか
2、 中心電荷と重力の関係はあるのか
3、 AdS/CFTの3次元版はどのようになっているのか

に疑問を持ちました。すると恐ろしいことに、「3次元の重力理論は位相的な場の理論である」ということはどうも誤りあることがわかりました.(もちろんChern-Simons理論は、計量を無視できるので位相的な場の理論です。)このことを、Wittenさんが、下のプレプリントに書いておられることがおぼろげながら、分かってきました.

0706.3359v1 "Three-Dimensional Gravity Reconsidered"

この5年間くらいは、3次元の重力理論は位相的な場の理論になるとばかり思っていて、結び目理論と同等なのだ(少し言い過ぎ)とナイーブに思っていたことがどうもそうではないらしい.

これはとんでもないことのようです.

2010年4月25日日曜日

Langlands対応と物理

2008年3月22日に日本数学会・日本物理学会合同講演会(於近畿大学)で、加藤和也先生の講演をお聞きする機会がありました。話が面白くて面白くて、ノートを取る余裕もありませんでした。(先生の講演をお聞きになった方であれば、このことをご存知でしょう。)そこで小学生が読後感想文を書くようにまとめ始めました。講義録では全くありません。

Langlands対応と物理

2年も前の文章を持ち出して恐縮です。その後の変化にもついていけず、みにくい仕上がりになってしまいましたが、ご容赦ください。私が中心電荷や重力に興味をひかれていく契機となったことは、間違いありません。しかし、本当に深淵な世界だと思います。
(最後のSchimmrigkさんの話の部分は2009年の正月に書いたものです。数論的なLanglands対応と物理に相応しいと思います。)

2010年4月23日金曜日

Gukovさんの最新の論文II

やっとの思いで説明文を完成させました。「説明」とは気がひけます。

Gukovさんの最新論文の説明

完成とはいっても最新のプレプリントの説明どころか、前の2003年のGukovさんの論文の説明にもなっていません。2003年のものの前の1/3程度の説明にはなっているかもしれませんが。書けば書くほど、これもあれもとなりどんどんと量が増えてしまいました。英語を知らない人が英英辞典を引いているような状況に陥ってしまいました。当初思っていた物理部分は全く書くことができず、幾何学のところだけになってしまいました。大きな課題は別の機会に、別な方法で説明することにします。

1、 Chern-Simonsゲージ理論
2、 Categorificationとの関係(特に次元簡約との関係)
3、 Coisotropic A-braneについて
4、 数論との関係
5、 Mahler measureの説明
6、 重力理論との関係

などなどたくさんあります。「Langlands対応と物理」="From Mirror Symmetry to Langlands correspondence"のところで吸収していきます。

最後に苦労したのはA-多項式の説明です。最初にGukovさんの2003年の論文を読んだときはすぐに理解したつもりがさっぱりと忘れてしまっていました。

とはいえ面白い仕上がりになっていると自負しています。

前回、未完成で公開したときとの相違点は、Mostow剛性定理の部分です。少しニュアンスを変えています。4次元以上では成立しないかもしれないと思っていました。しかし3より大きな一般次元でも、同等に成立します。この部分書き換えました。

2010年4月21日水曜日

WoitさんのBLOG II

数式を使ってないのに、とても難しい内容になってしまいました。しかし、面白い内容と思います。Langlands対応と物理の全体を数学サイドからみるとこのように見えたのかもしれませんね。

各ページの真ん中の線より下は、私の勝手な注です。

WoitさんのBLOG IIについて

元々のWoitさんのBLOGは、

Geometric Langlands and QFT

登場人物の紹介:(Hitchin教授はあまりに有名なので省略)

Gukovさん、弦理論派のCaltechの数理物理の先生。Langlandsと物理についてはWittenさん、Kapustinさん、E.Frenkelさんらとともに推進しています。他は量子不変量の論文が複数あります。私は非常に面白い理論を展開されるかたと思っております。

E.Frenkelさん、表現論を中心に数理物理全般の専門家、California、Barkeleyの先生、私はKapustinさんとWittenさんの論文がでる半年前に、E.Frenkelさんの「Langlands対応と共形場理論」という論文に書いてあったことで、KapustinさんとWittenさんの論文が進行中であることを知りました。

Ben-zviさん、現在はTexas大の数学の先生、Langlands対応と物理の推進、Wittenさんに意見して「Langlands対応と物理」をやることを決断させるような人らしいので(本文参照)、量子場理論とJones多項式のようなことを決断させたAtiyah教授のように年配で大ベテランかと思いました。ところが実際はそんなかたではなく、E.Frenkelさんのお弟子さんです。Barkeleyの大学院時代の若きBen-zviさんの類体論のセミナをするInterNetのビデオを、後日見ました。

実は、書いてみて、内容が数学カラー一色なことに気付きました。物理カラーはほぼありません。原文がこの回に限って数学カラー一色なので、私の注だけでも物理カラーに傾斜を強くすべきだったかもしれません。

2010年4月18日日曜日

WoitさんのBLOG I

今からルビコン川を渡ります。ローマを制圧する腕力も能力もありませんが、ambitionだけで、、、

話題である『WoitさんのBLOG I』は、

WoitさんのBLOG Iについて

であり、元々のWoitさんのBLOGは、

Witten Geometric Langlands Talk and Paper

です。

Langlands対応について物理との関係では幾何学的のついた「幾何学的(geometric) Langlands対応」という意味で使われております。しかし私はこれは幾何学的をとった本来の(数論的な)Langlands対応を意味すべきとの立場です。もちろん確立された議論ではありません。

登場人物の紹介:
Woitさん、Columbia大学の数学(表現論)の先生です。反弦理論の立場から"Not Even Wrong"という本を出されています。WoitさんのBLOGが有名で、そのBLOGのロゴが"Not Even Wrong"で、弦理論の反対派(と賛成派の)議論の場となっています。発言者はみな名前の通ったプロばかりです。面白いです。

私はWoitさんは、Wittenさんをとても尊敬している人なのだと思います。このことは上記の本の原文"Not Even Wrong"をみても、日本語訳をみても伝わってきます。8章あたりから11章あたりにかけて素粒子理論の標準理論の問題点を整理しているところなどは、数式を使わずによくあれだけ分かりやすく説明ができるものだと感心します。一読の価値あります。

Kapustinさん:Wittenさんとともに、「電磁双対性とLanglands対応」書かれた共著者です。一度講義のビデオをみたことがあります。思慮深いおとなしいかたのように思いました。Wittenさんは説明するまでもありません。

2010年4月16日金曜日

今後の方針

ブログを開始してから、9か月以上たちました。何年か維持するためにペースを考えます。次のようにいたします。

1、話題は数理物理関係に限定します。
2、説明調にします。オリジナルなものや、大きな労力のかかるものは能力がなくできません。(他の方々、特にプロ方々も大変な努力を払っておられること分かりました。)
3、他の方の引用は基本了解をいただいてからにします。少なくとも出所は明確にします。
4、今までのメール等でのやりとりしている内容の公開も、基本的にはメールの相手の同意を得てからにします。

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やはり、「(ミラー対称性を含む)Langlands対応と物理」の面白みを伝えるという線を中心にしたいと思っています。領域が広いことと、非常に難しいことから私の理解の範囲を大きく超えています。7,8年ためていた内容を少しずつ見直しながら、少しづつレポートにします。

この話題人気がないようです(世界的に)。何故でしょうか。しかし、説明せずにはいられないくらい面白い内容だと私は思います。

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9か月たち、Langlands対応と物理が人気なないどころか、AGT対応の中でも盛んに議論されていますし、Wittenさんの最近の話もこの観点に立脚していることがよくわかりました。

さらにLHCの実験に興味をもったことから、場の理論(量子論)、ブラックホール(相対論)さらには、Riemann予想(数論)の三つが重なる領域に話が集中するようになってきました。今後も当初方針で継続します。

2010年4月4日日曜日

S.Gukovさんの最新の論文

S.Gukovさんの最新の論文がでました。3月26日には入手して眺めました。題が「量子場理論と体積予想」というのですから、これは読まなくては、、、、

論文自体は、arxivに出ています。

"Quantum Field Theory and the Volume Conjecuture"

2003年頃に、Gukovさんは3次元重力の本(論文)を書かれています。その前に分からないながらも、面白いことを考える人だなと思っていました。結構、大風呂敷です。この大風呂敷とてもいいです。2003年の3次元の重力(?)CS理論(?)のあたりがおぼろげながらわかり始めました。続くHitchin functionalは読んでいて、手に汗を握りました。素晴らしい。

"3-dimensional gravity, Chern-Simons theory and A-polynomial"

今回の「量子場理論と体積予想」には、後ろのほうに、幾何学的量子化と変形量子化を合わせたD-brane(coisotropic D-brane)が出てくるBrane量子化の話があるに違いないと思ったら、確かにあります。Langlandsと物理というここ2、3年の研究の結果から出てきたものです。(coisotropic D-braneについては別の機会にしたいと思います。これ何故日本では議論の対象にならないのでしょうかね。coisotropic D-braneはやはり重要ですね。HMSは少し変更必要。)人気のない”Langlandsと物理”に花が咲いて、少し勉強しようとした私も少しうれしい。

もうひとつは、CS理論でWittenさんが最近、解析接続の議論をしています。私は理解していませんが、CS理論には決定的なもののなのだと思います。これが登場するであろうと思っていたら、やはり登場していいました。

論文の全体も、体積予想とはから起こしてあってとても教育的に書かれているように思います。元気のある人は読んでください。多分、大変な勉強になります。

と思って読み始めたら、突然、大栗先生のBLOGに、(この論文の共著者)Tudor Dimofteさんが博士号をと書いてあります。しかも、WittenさんのCS理論についての新しい知見まで書いてあると評価している記事がありました。私はTudor DimofteさんはGukovさんの弟子でCaltechかPrincetonかなんかの大学院生かpostdocかなと思っていましたら、なんと大栗先生のところだったのですか。

Langlandsと物理の昨年の6月のE.FrenkelさんとGukovさんの共著の論文はもう出ないのでしょうか。p-adicとstringがつながらないと前進はないのかもしれません。多分Langlandsは幾何学的がとれないと本物といえないのではないでしょうか。その兆しはあると思っています。

zeta函数の特殊値の不思議

2009年の春(?)夏(?)頃に書いたものです。何人かのひとにはお見せしたとは思いますが、何故ゼータ函数の特殊値に興味を持つのかについて記載したつもりです。後ろの部分は、丁寧に説明を付けていません。

「zeta函数の特殊値の不思議」

申し遅れましたが、数理物理にとても興味を持っています。計算機屋(システムソフト)を退役するので、この7,8年の間で聞きかじったことをまとめることにします。

内容は自分の理解しがたい難しいものから、簡単な上記のような数論の最初のところを面白いところだけ文字にしたにすぎないようなものまで公開することにします。根気が続く限り続けるつもりです。

質問は歓迎です。研究者や教授ではありませんので、答えれる保証はありませんが、精一杯お答えするつもりです。