年初のE.Verlindeさんの論文は、コペルニクス的転換ですね。エントロピー(熱力学)からNewtonやEinsteinを導出してます。しかもNeotherの定理(Waldの論法)以外は対称性(不変性)を仮定していない。ほかにはholographyを前提にしている。
数式は簡単ですが、物理的なバックグラウンドは少し必要だと思いました。とはいえかなり広い層にも、このプレプリントの意味やコメントの意味は理解されると思いますので、私の勝手訳ですが掲載したいと思います。
ところで読み始めてすぐに気付く点(前のBLOGに自作自演でコメントしました)をまとめておきます。次々と問題に気付きます。
1、 そもそも弦理論は、重力理論と標準理論を統一的に説明するとして登場しました。(強い力を理解するために登場して、閉弦が重力になるのでした。)とすると重力のほうはよいとして、素粒子理論のほうはどう説明するのだろう。Higgs粒子が質量の起源になっているとは標準理論の教えるところで、今LHCで探している。質量の起源がエントロピーの傾斜だとするとHiggs粒子などはいるのかな、Zボゾンなどは、、、、このあたりは全く書いてない。
2、 1の根拠として、ゲージ理論(ないしはゲージ原理)に相当するものが熱力学から導出できるのだろうか。重力理論もゲージ理論の一種ではなかったのでは。(ここで重力からAdS/CFT対応、開/閉弦対応でゲージ理論を出すのかな?)
3、 時空の出現(emregent)と言って運動方程式は導出できたが、時空の幾何学、つまり空間3次元(余剰次元があってもよいが、)や計量(Lorentz計量)は導出できるのだろうか。
4、 ホログラフィック原理を前提とするが、重力理論とブラックホールの物理を前提に作られた理論であると理解していた。前提にしなくともよいと書いてあるが、本当か。DiracがHeisenbergの非可換性を使って量子力学を作った例を挙げているので納得はするが、「同等性」とは物理の世界でも証明か説明が必要とされるのだと思う。
5、 量子論は説明できるのだろうか。前期量子論からEinsteinの光量子説へ至るまで、Maxwellの方程式の「破綻」を指摘したのも、これまた、熱力学であったはずだ、このあたりの説明はない。重力は説明がついたとして、光子の説明=Maxwellは。(ここを私は注目していて、Maxwellの破綻を逆にたどれば、少なくともMaxwellが出てくるのではと期待している。素人の見当違いかもしれない。)
6、 Hawking輻射については、項目はあるものの歴史的な論争はホログラフィックで決着がついたものとしているのだろうか。重要そうなことは、出てきているようには見えない。
注目点がNewton力学と一般相対論なので、そこまで手が回らないのだろうと思います。背後には既に準備されているものがある気がします。確かに単独論文で、コペルニクスの転換はありえないと思います。積み重ねるしかないのだと思います。
間違いを直しながらBLOGに載せることにした。しかも順番は、コメントからにします。もちろん著者はVerlindeさんご本人で、私の勝手訳です。
【翻訳】論文のロジック
最初は、ご本人のホームページに掲載されているもの3点の最初のもの、ほぼ同一のものがLubos MotlさんのBLOGに掲載されています。Lubos Motlさんの話題のBLOGは、下記です。
the reference frame
googleで「質量の起源」を検索すると、この記事が検索されます。このページは「質量の起源」をエントロピック重力理論とすると、現在問題となっている「質量の起源(のひとつ)」であるHiggs粒子の存在/非存在に影響を与えるのではないだだとうかと問うています。
返信削除また、Verlindeさんは別のコメントの中で、重力は「phononのようなもの」とも言っています。ということはエントロピック重力理論では、遠隔作用であるということ自体の意味を失うことから、重力波の理論の再編成や、重力子の閉弦理論も再検討が必要になるかも知れないことになります。
少し影響がありうるのでコメントさせていただきました。