2010年5月3日月曜日

重力の起源は?

5月1日の数学書房主催の橋本先生の「トポロジー入門」の後の懇親会席上の最後に出た話題で、「最近Verlindeさんが面白い論文を書いておられて、しかも数式が信じられないくらい簡単なんだ」という話を橋本先生よりお聞きしました。(Verlindeさんは双子の兄弟でHermannさんとErikさんという二人とも弦理論の世界ではWittenさんやVafaさんの次に有名な人です。Verlinde公式という名前の公式があります。)Verlindeさんは2010年の年頭に、下記の論文をarXivに投稿されておられます。

On the Origin of Gravity and the Laws of Newton

先ほど印刷してきて、さっそく眺めてみたところ簡単な式(多分、高校の数学の範囲で理解できる)で、次のことが説明してあります。眺めただけでもアッと驚く内容のようです。内容詳細は理解していませんが、、

Newton力学の柱である、位置や速度、加速度は、ホログラフィックな立場から導出されるべきものと書いてあります。元は温度やエントロピーなど、空間に依存しない量から導出するのだそうです。慣性もそうだと書いてあります。多分、位置が導出されるものなので、空間自体もemergence「創出されるもの」なのだとの主張になるのではないでしょうか。そこまでは読んでいません。

Einsteinの一般相対論も、この方法で導出されるべきものと書いてあります。多分、弦理論はいらなくなるというか、少なくとも重力は導出されるべきものなので、重力の「元」となる閉弦とその相互作用も導出されるべきものです。等価原理もこの論法で提示できると書いてあります。

Einsteinの一般相対論からブラックホールの熱力学が出てくることは勉強しましたが、その逆に熱力学を基礎として、ホログラフィック原理により重力を導出するということらしいです。この論法でゲージ理論(通常の電磁気学とついでにYang-Mills理論)も導けないのでしょうか。この点は、この理論の試金石になるのではないかと思います。

ベースにマクロとミクロの関係(熱力学と統計力学の関係)があって、ミクロ状態から問題を立てていくようです。これはたとえですが、圧力は(小さな粒子の)大きな集団だから働くのであって、粒子一つ一つが明らかになるような小さな状態では圧力など働かないように、これと同じことが重力にも言えて、小さな距離では重力は働かないのだとなるのでしょうか。繰り込みの問題はどうなるのか。Hawking輻射はどうなるのか。と次々と疑問が湧いてきました。

ブラックホールとエントロピー公式のところは説明があるのですが読んでいません。Waldの論法(Noetherの定理)や、虚時間にして解析接続すると逆温度とエネルギーが同じであること(この2つは空間の概念がいりません。)などが登場するのだと思います。

他にもBLOGをみたら、L,MotlさんのBLOGにはErik Verlindeさんとのやりとりが掲載されています。wikipedia(英語版)にもここに書いた程度のことは書いてありました。びっくり。

the reference frame

6 件のコメント:

  1. 自作自演のコメントとなるが、質量がエントロピーから出てくるのであれば、Higgsボゾンの存在の意味はどうなるのかとの質問が他のBLOGにあった。

    www.scientificblogging.com/hammock_physicist/it_bit_case_gravity

    本当にHiggs粒子がLHCで見つかったら、重力がemergent forceであるという矛盾してしまわないのだろうか。もちろん、質量がHiggs場の存在だけからくるものではないことは理解した上でも、この疑問は意味を持っている。

    最初のゲージ理論が説明がつくかということと関連する。自発的対称性の破れの話はどうなるのだろう。

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  2. おそらく、holographic原理がどこから来るかについても問題かもしれない。holographicは重力や弦理論を前提にして説明されているように思う。

    そのような例は他にもある多数あるので、、、

    心配することではないか。それより先へ読み進まなくては。

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  3. うっかりしていた。時間を前提として、空間が出現するものであるとしたら、空間次元3はどこから出てくるのだろう。Verlindeには明確には書いていない。

    他のBLOGも気にしていなさそう。

    コメント1,2はだいたい他のBLOGにも似たようなことが書いてある。

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  4. 前期量子論というのがあって、これMaxwell電磁場方程式を「破綻」していく過程があるが、この「破綻」を指摘しているのが、やはり熱力学である。Boltzmann方程式。Einsteinの量子論もこれを根拠としているのじゃなかったか。

    ゲージ理論との関係は、多分、ここまで遡らないと決着しない。何故量子論がでてくるのかだ。

    ちなみにHawking輻射については、本質的に量子論なわけだが、Verlinde論文はそこまで論点を進めていない。これから量子論についての議論が出てくるのだろうと思う。

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  5. 2011年7月14日:「E. Verlinde さんの講義に登場する宇宙の話題I」及び「E. Verlinde さんの講義に登場する宇宙の話題II」で、ここで掲げている疑問は、提示しました。

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  6. E.Verlindeさんの議論は最初知ったときの驚きを書いたものです。その後、2010年の夏から秋にかけてのKITPとHarvardの講義で、中性子星の崩壊の解析や熱力学の断熱定理とOppenheimerの議論からブラックホールのエントロピーの解析を進めておられます。また2010年の秋には、ほかで、私のブログに紹介しているように宇宙論の展開があります。

    そもそも、私はE.VerlindeさんのコメントはL.Motlさんのブログに掲載されたものをみていましたが、既に最初の段階から(2010年1月)段階から、L.Motlさん自身はブログで、E.Verlindeさんのエントロピック重力理論の強い疑問を呈しています。

    『他にもBLOGをみたら、L,MotlさんのBLOGにはErik Verlindeさんとのやりとりが掲載されています。wikipedia(英語版)にもここに書いた程度のことは書いてありました。びっくり。』と本ブログには記載してますが、、、、

    2010年の秋段階ではすでに、Kobakhidzeさんが2003年頃のNatureの論文を根拠にE.Verlindeさんのエントロピック重力理論に批判をしています。

    基本的には、『量子化になっていないのでは』ということが論拠と思うのですが、詳細を私は理解することができていません。Arxivの上では非可換幾何の立場から、Verlindeさんを支持し、Kobakhidzeさんを批判する内容のものも現れました。

    2011年に入って、Kobakhidzeさんは再度批判する論文を発表しています。一方、同じ量子化の部分が誤っているとの出発点に立ちながらも、Kobakhidzeさんとは正反対結論である量子化をするとVerlindeさんの議論は正しいのだという論文も現れています。

    さらにKobakhedzeさんはL.Motlさんの意見と同等といってよいほど意見を共通にしているようです。ほかにも様々な種類の反対意見もあるようです。



    詳しい状況を記述したいのですが、反対派の論拠を理解していないので述べることができないでいます。

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